どうも、ゆきけーです。

この記事は前のワイングラスの選び方の続きです。

 

「万能」とは?

前記事では最も汎用性の高い中間グラスの条件を規定しましたが、
果たしてあれが完璧かというと、
そうではありません。

 

簡単に言うと、

どんなグラスを使ってもそのグラスに合うワインは優遇される

ということです。

 

中間グラスも完全に等しくワインを映し出すわけではありません。

 

中間グラスは中間タイプなワインを最もバランスよく映し出します。

 

 

ゆえに真に万能なグラスはこの世に存在しません。

 

 

両極端なタイプのワインをどちらも最適にチューニングすることは不可能です。

 

それこそ万を超える種類のグラスから
ひとつずつ自分の好みに合わせるようでなければ。

 

これにはゲートオブバビロンを有するギルガメッシュ(Fate)も真っ青です。

 

 

更に、「万能」という言葉も意味が曖昧です。

「すべてのワインを美味しく感じさせる」のか

「すべてのワインをひとつの絶対基準で裁定する」のか

あるいは「どちらにも偏らず、中間を重んじる」のか。

 

 

何となく思い描いている「万能グラス」というものについて、
具体的な定義はふわふわしたままです。

人によって「万能グラス」の定義は違うのです。

 

こう考えていくと、主に「万能グラス」に対するイメージは
以下の3つに大別できます。

 

 

1.すべてのグラスの中で最も中間に位置するグラス

2.すべてのワインを一つの基準に基づき判定するグラス

3.すべてのワインを美味しく飲めるグラス

 

 

次にこの3つの要望に適しているグラスをご紹介します。

 

 

 

1.すべてのグラスの中で最も中間に位置するグラス

「中間グラス(前記事で定義)」

 

このグラスは高いワイン、安いワインのどちらにも有利に働かず、
中堅クラスのワインに最も利するグラスです。

 

 

よくメーカーでは万能グラスという宣伝文句を出しますが、
「全てのワインを等しくバランスを整える」
という意味からすると全くの間違いです。

 

6000円前後の中堅クラス、それも中間な特徴を持つワインを
最もバランスよく映し出すので、いうなれば「中間ひいき」なグラスです。

 

 

 

 

2.すべてのワインを一つの基準に基づき判定するグラス【1】

「1000ml台のボルドーグラスとブルゴーニュグラスのセット使い」

 

1000ml台のグラスというのは、ロマネコンティやペトリュスのような、
本当に頂点に位置するワインのために用意されたものです。

 

なので頂点のワインのために用意された
1000mlグラスを絶対基準として規定し、
そこから減点方式に全てのワインに判決を下していくのが、
このグラスが「万能」と言われる理由です。

 

そのためワンコインのワインなどをこれで飲むと
ひどく薄い味わいになります。

 

ですがそれでいいのです。

 

低レベルのワインは無慈悲に切り捨てる絶対強者、
それがこのグラスの「万能」に込められたポリシーです。

 

格差が最も激しいグラスですが、順位自体は正しく反映されるグラスです。

 

これだけ2脚セットなのは、現在調べた中では
このタイプでの中間グラスは見つからなかったからです。

 

飲み比べて平均値で考えましょう。

 

 

 

 

3.すべてのワインを一つの基準に基づき判定するグラス【2】

「INAO国際規格テイスティンググラス」

 

(2.)とは別に、国際規格という絶対基準を決めて審査するグラスです。

 

容量は(2.)の正反対であり今回挙げた選択肢の中で最小の215mlです。

 

口径も46mm*65mmとかなり狭く、比率も1.41となっています。

 

 

このグラスはリースリンググラスの形状をそのままに縮小した形をしており
小さすぎて香りがほとんど分からず、

口径が狭すぎて舌に接する面積が狭くなりすぎ、
要素がチグハグした味になります。

 

そのため全てのスティルワインは、このグラスで普通の飲み方をすると、
マトモに味わえません。

 

口径が狭すぎても、一度に口に含む量が少なく、舌に接する面積が小さすぎて
味がアンバランスに感じられてしまいます。

 

ワインテイスティングの正しい作法は
普通にワインを飲み下すこととは違うので、
通常のグラスのように飲む使い方は想定されていません。

 

 

AOC法(AOC認証の規定)に基づき
INAOという組織が作られ、INAOが決めた国際規格がこのグラスです。

 

ワインにAOC認証があるように、コニャックにもAOC認証があり、
コニャックのテイスティングもこのグラスで行います。

 

このグラスはISO3591に認定されていますが、
その形状やサイズの決定理由については調べられませんでした。

 

ISO3591【1977年制定】要旨

 

リーデルの「ブルゴーニュ・グラン・クリュ」が世に出たのが1958年なので、
少なくともワインを美味しく飲むために
形状が決められたわけではなさそうです。

 

 

このグラスの形状的な相性としてはスティルワインよりも、
ポートワインなどの酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)
に合います。

 

 

総合的に考えると、
国際規格であるという強制力がこのグラスを汎用たらしめています。

このグラス自体ははワインではなくスピリッツ用に近く、
スティルワインを美味しく飲むためのものではないです。

 

 

 

 

4.すべてのワインを無難に飲めるグラス

「400ml台のリースリング(ボルドー型)グラス」

 

 

全種類のワインを最高のポテンシャルでなくとも
そこそこ飲めるグラスは、主にリースリンググラスと呼ばれるものです。

 

リースリンググラスは本来、
リースリングの強い酸味とバランスを取るために
甘味を感じやすくさせる機能がありますが、
これが副次的効果を果たします。

 

適量を口に含みながらも、大きいグラスのように広がりすぎず、
INAOグラスのように狭すぎもしないちょうどいい具合になっていて、
バランスを保ちつつ甘味を感じやすくなっています。

 

しかし中間グラスと同じ欠点を持ち、
裏を返せばボリュームのあるワインを委縮させてしまう、ということです。

 

 

中間グラスが
「極端な高級ワインを除外し、それ以外のワインに対応するグラス群」
の中での「グラス群全体の平均的な形状をとったもの」であるのに対し、

こちらは「ワインの感じ方としての無難なところ」という意味です。

 

厳密に突き詰めた結果の微妙な違いなので、
この2種類に関してはどちらか片方を選んでも誤差の範囲内です。

 

 

 

ワインを美味しく飲みたいなら少なくともINAOグラスは不要です。

 

美味しく飲むことのみを目指す場合、

【1000mlグラスペア】
+
【中間グラス】か【リースリンググラス】のどちらか片方

の計3脚でほぼこなせます。

 

 

 

結論

この4つの「汎用」の価値観に優劣はありません。

等しく正しく、しかしどれにも欠点がある。

ではどうすればいいのか。

 

私は、全てのグラス選びやワインの評価に主観が入っているものとした上で、
全てのグラス選びやワインレビューも等しく正しいと考えます。

 

どのグラス選びも正しさがあり、穴もある。

 

その上で相手の意見を認め、自分の感じ方も大切にする。

 

この両立が大切なのです。

 

 

とはいえ、挙げた4種類5脚のグラスセットはどれも異なる意味で
「汎用グラス」と呼ぶにふさわしい機能を持っています。

 

「万能グラス」を夢見て探求しようとする時、
これよりグラスの数を減らすことができない限界点です。

 

全てのワインを100%調整してくれるグラスは存在しないことに加え、
そもそも「万能」の基準すら時と人と場合による以上、
その時々で基準となる軸足をどこに置くか
の違いでしかないわけです。

 

ですのでありとあらゆるグラスを比べ尽くした結果の、
最後の到達点としてこの4種5脚のグラスセットが
あなたのグラス探究の旅を終わらせてくれるものとなります。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。